
人が、何かを言っているけど、全く理解ができない事があります。
あまりに立場が違いすぎて、言っている人の気持ちがわからないのです。
この『ききみみずきん』のお話では、ずきんをうまく活用できたからこそ、おじいさんは安楽に暮らせるようになったのです。
それでは、おじいさんが、どうやって、ききみみずきんを活用したか、あらすじをみていきます。
ききみみずきんのあらすじ
あるところに、とても貧乏なじいさんがおりました。
村のおみやにお参りして、「お供えをしたいけれども、貧乏でそれができないから、勘弁してください。」と言っていました。
そして、いつの間にか眠ってしまって、夢の中に、神様が現れて言いました。
「じいさん、お前はよく働く、正直ものだからこのききみみずきんをやる。これをかぶれば、動物も植物も、何をいっているかが、わかる。これを持っていけ。」
じいさんが目覚めると、ひざの上に、真っ赤な頭巾がのっていたのです。
そして、帰る途中で、道端の松の木の下で休んでいました。
すると、東からも、西からもカラスが飛んできて、松の木にとまったのです。
そうして、カラスがカアカア鳴いていたので、じいさんは、頭巾をかぶってみると、カラスが話していることが、わかったのです。
「西の村では、庄屋の旦那様が、この間から病気になっているんだ。」
「その病気は土蔵を作った時に、はめ板の間にヘビがはさまって、ヘビが悲しがって、その思いから、旦那様は病気になっているのに、人間どもはわからないんだ。」
「お前の方には何か珍しい事はないかな?」
「お前さんと、同じような話だけれども、東の村では庄屋のお嬢さんが病気になって寝ておられる。」
「その病気と言うのは、茶室を作らしたが、その茶室の屋根の雨が落ちる所に、ヒノキの株がある。」
「株はだんだんくさっていくが、根は生きとる。春になって、芽を出すと、人間はすぐに刈り取る。」
「ヒノキは生きる事も死ぬこともできずに、苦しんどる。そのヒノキの思いで、お嬢さんは病気になっとる。」
「毎晩、木の仲間が見舞いにくるので、その思いも重なって病気になっとるのに、バカな人間はそんな事もわからん。あわれなもんだ。」
二羽のカラスは話がおわると、飛んで行った。
じいさんは、「これはいいことを聞いた。」と喜んで帰りました。
そして、次の日、西の村へ出かけて、庄屋の家に行って、どうして、旦那様の病気が治らないか説明し、ヘビを助けるよう言うのです。
ですから、さっそく庄屋がじいさんの言う通りヘビを助けると、旦那さんの病気はメキメキ良くなりました。。
そして、じいさんにほうびのお金をどっさりくれたのです。
今度はじいさんは、東の村の庄屋にやってきて、どうしてお嬢さんの病気が治らないか説明します。
庄屋は、すぐに、じいさんの言う通りにすると、お嬢さんの病気は、うそのようによくなったのです。
庄屋は大変喜んで、じいさんにほうびのお金をたくさんくれました。
そして、じいさんは、2人の庄屋からもらったお金で、安楽にくらしました。
おしまい。
ききみみずきんの教訓
このお話の教訓は、立場が違うと、人が何か言っていても、聞こえても意味がわかっていない事が、たくさんありますよ。ということです。
耳で聞くことが出来ても、わかろうとする気持ちがないと相手が何をいっているか理解できないのです。
このお話の中では、おじいさんが、ききみみずきんをもらって、カラスや木の声を聞き、病気を直します。
ただ、カラスが言っている事を聞こえただけでは、誰もが、病気を直せ訳ではないのです。
このおじいさんは、カラスのいう事をきき、それを信じて行動したことで、病気を直せたのです。
へびや、木の思いが病気にさせていると言われても、そんな事があるはずがないと思う人もいるでしょう。
でも、おじいさんは素直に理解して。カラスの言葉を信じたので、病気を直してお金をもらえたのです。
例えば、会社の社長がいます。
そして、会社の立場の中では、一番下で、現場で実際に働く社員さんがいるとします。
会社の利益が年々減っていて、社長さんは困っています。
ですので、社員を減らして、人件費をへらして効率をよくすれば、利益も回復するだろうと、数字ばかりをみて、直接の部下に指示します。
そして、その指示をうけた部下は、またその部下に言います。
そして、実際に現場で働く人は、誰かがくびになり、今までしてきた仕事よりもっと多い仕事をおしつけられます。
社長は、現場が、一日8時間なら8時間、一秒も休まずに働けばできるだろうと、数字上の事を見て言うのです。
しかし、実際に現場ではたらく人は、機械ではないので、限界があり、疲れると、効率もおちます。
少しの間は良くても、そんなことを、ずっと続けると、からだに支障をきたし、仕事がつづけられなくなる事もあるのです。
でも、この社長さんは、自分が現場で働いた事がないので、その意味がわからないのです。
数字でしか物事を測れないので、数字上はできるのに、どうしてできないのか、理解ができません。
反対に、実際に現場で働く人たちは、社長が言う、何億、何千というお金の事を言われてもなんの実感もないのです。
かみ砕いて、今日の目標やら、今月の目標やら、上司はいいますが、その数字が、社長のいう何億、何千になんの関係があるのか、説明されても、実感は全くなくて、上の人が勝手にいっているくらいにしか感じません。
立場が違うと何をいっているか、お互いが理解しようと努力しあわないと、なにも通じないし、きこえないのです。
そして、例えば、ゴミの問題です。
1つの国は、たくさんごみを出しています。
そして、そのごみを処理する国があるのです。
ごみを受け入れて処理している国はごみの置き場所や、処理の仕方で、環境がわるくなっています。
そこで、働き、住んでいる人たちは汚れた水を使って生活しています。
でも、ごみを出す国はそんな事はわからないので、平気でたくさんのごみを出し続けます。
そして、何万トンというごみがまたその国に送られます。
自分の手元にごみが残らない人たちは、ごみがたくさん置いてある場所で生活する人の事は全くわかりません。
自分が出すごみは、そんなにたくさんではないかもしれませんが、集まると、何万トンになるんですよと言われても全く実感がわかないのです。
ですから、相手のいう事をわかろうと努力して聞かないと、ただ耳に入っているだけでは、理解できないのです。
お互いが、お互いの言っていることを理解する努力をし、お互いの立場に立って、物事を考える事ができれば、ききみみずきんも役に立つという事です。
ききみみずきんの原作
日本の東北地方の昔話です。
全国に似たお話があります。
おじいさんが、きつねを助けてあげて、きつねから頭巾をもらうというお話もあります。
動物や、植物の声が聞きたいというのは、世界中の人が思うのでしょう。
同じような、聞こえないものが聞こえるようになるふしぎなお話は、世界中にあります。
まとめ
このお話の教訓は、立場が違うと、人が何か言っていても、聞こえても意味がわかっていない事が、たくさんありますよ。ということです。
このお話では、動物や植物同士は言っている事がわかるのです。
人間は、自然とはまったく違う立場になってしまった為に、人間以外の言葉は、理解ができなくなったのかもしれません。