
人はどこから生まれ、死んでからはどうなるのでしょう。
人を含む自然界では、大昔から繰り返している事があります。
『ヤマタノオロチ』は、命の神秘とそれぞれが考える事の重要性が含まれています。
ここからは、『ヤマタノオロチ』のあらすじから見ていきます。
ヤマタノオロチのあらすじ
スサノオは地上の国を作った神、イザナギの末息子です。
ですが、イザナギが命じた場所を治めなかったので、父神に追放されます。
そこで、スサノオは姉のアマテラスがいる天空の国に行ったのですが、こんどは天空の神を困らせたので、高間の原からも追放されたのです。
天空から地上に下るとき、スサノオはオオゲツヒメの屋敷の前を通りかかります。
スサノオはオオゲツヒメが食べ物の女神と知っていて、食事を食べさせてもらおうと思うのです。
すると、オオゲツヒメは自分の鼻や尻から、次々に食べ物をだしました。
スサノオはその様子を見てしまい、「私に、悪意があって、汚れた物をたべさせようとしている」と思い、オオゲツヒメを切り殺します。
すると、死んでしまったオオゲツヒメの体から、色々な物が生まれ出てきました。
頭からカイコ、目からは稲の種、耳からはアワ、鼻からは小豆など。
これらは、地上の人々の作物の種になります。
スサノオは出雲の国に降り立ちます。
すると、川岸で、年老いた男と女が、美しい若いむすめと三人で泣いていました。
スサノオは事情をききます。
年老い両親はアシナヅチとテナヅチと言い、娘はクシナダヒメといいます。
2人の間には8人の娘がいましたが、ヤマタノオロチに毎年ひとりずつ食べられてしまって、その子が最後の娘です。
「ヤマタノオロチとは一体どんなやつだ?」とスサノオはがたずねると、「体に八つの頭と八つの尾があって、ものすごく大きい。」というのです。
スサノオはこれを聞いてもこわがりませんでした。
「それなら、わたしがやっつけてやろう。」
そして、年老いた両親に、伝えました。
「強いお酒を造りなさい。そして、頑丈な垣根を作って、そこに八つの門を作り、酒舟を置きなさい。」
年老いた両親は村人を集め、スサノオのいう通りにします。
やがて、ヤマタノオロチがやってきました。
ヤマタノオロチは娘を食うつもりでしたが、どこからも娘のいい匂いがしません。
そして、酒舟に気がつき、八つの門に八つの頭を入れて、酒を飲み始めました。
頭は八つでも体はひとつなのです。
ヤマタノオロチはすっかり酔っぱらって、門に頭をつっこんだまま、ぐっすり眠ってしまいました。
スサノオは、眠ったおろちの頭を端から切り落としていきました。
のこった頭は暴れますが、酔っている為、動きが鈍く、スサノオにはかなわなかったのです。
八つの頭を切り落とすと、今度は尾を切り刻むと、太刀が出て来たので、アマテラスにささげることにしたのです。
出雲の人は、ヤマタノオロチがいなくなって、大喜びです。
そして、2人は結婚することにしました。
おしまい。
ヤマタノオロチの教訓
教訓1
何かをしようとするときに、みんなが同じ方向をみて、力を合わせる事は、重要です。
でも、みんなが全く同じ方向を向いてしまうと、うしろの事や、少し離れた所の物事が、全く目に入らなくなる危険があります。
少しちがう考え方で、周りを見られる人がいれば、スムーズに物事が進むことがあります。
それぞれの意見も取り入れて、この方法もやりながら、この方法もやるというのが、色々な視点から物がみられるので、有効な場合があります。
柔軟に色々な視点で、物事を考えられるようにした方がいいのです。
この話の中では、ヤマタノオロチの八つのあたまみんなが、自分の欲望のままに、疑うこともしないで、お酒を飲んでしまったので、スサノオの思う壺になり、八つの頭全部が切られてしまいます。
もし、八つの頭のうちひとつでも疑い、お酒をのまなければ、結果は変わっていたかもしれないのです。
たとえば、衣料の商品開発の場面で、釣りをする男の人用に、服をつくります。
でも、とても着心地が良くて、水にも強く、しかも早くかわくなど、利点があり、女性や、釣りをする男の人以外の若い人も着たがるとします。
そうなってしまうと、サイズやデザインをもう一度考え直さなくてはいけません。
どうしても、釣り用などの衣類は、機能性が重視されるため、デザインが後回しになることが多いので、おしゃれで機能的な釣り用の服を作れば売れるかもしれないのです。
開発チームの誰かが、違う方向から考えていて、もしかしたら女性も着たがるかもしれないと思いついていたら、もっと、効率よく作って、もっと売れたかもしれません。
狭い範囲で物を考えるばかりではなく、色々な場面を想定して、色々な人の意見を取り入れて仕事を進める事は時には大切です。
例えば、たばこに関する商品は、実際に使うのは、たばこを吸う人達です。
でも、反対の立場である、たばこを吸わない人たちの立場にも立って、商品を開発しなければならないのです。
同じ方向を向いた人たちだけで物を考えるのではなくて、反対からの視点や柔軟な広い視野をもって、考えなければならないという事です。
教訓2
そして、自然や、生きているものは循環し、生まれては死んで土に戻るという事です。
このお話では、オオゲツヒメが、汚れたものでご飯を作っていたと、スサノオは、オオゲツヒメを殺してしまうのですが、人は水を飲み、排出して、その水分は蒸発してまた雨になり、私たちはまたその水を飲むのです。
そして、人も人の排出物も、土に帰って、肥料になりそこにまた穀物や植物がはえるのです。
それから、何よりも、自分達は、どこから生まれて来たのかもう一度、かんがえるべきです。
人はお母さんのおなかの中で育って、それから生まれてくるのです。
それは、昔から繰り返される事で、変わる事はないのです。
人はそのことを頭では理解しているけれども、実感がないし、忘れてしまいます。
私は母親業の先輩に教えてもらったのが、子供が、特に男の子が母親にひどい態度をとるようになった時に、ひとこと言う言葉です。
「あなたはどこから生まれて来たかわかっていますか?」
この言葉はもしかしたら子供には衝撃ですが、どうも、この一言に、お母さんには勝てないと思う子も多いようです。
使うタイミングも、その子の性格にもよりますが・・・。
ヤマタノオロチの原作
古事記、日本書紀に書かれた、日本神話の中のお話。
古事記は日本最古の書物で、712年に書かれたとされている。
ヤマタノオロチはそのお話にでてくる怪物の事です。
島根県の出雲にある神社には、ヤマタノオロチの骨と言われるものが、保管されている。
まとめ
この『ヤマタノオロチ』の教訓は、同じ方向を向いた人たちだけで物を考えるのではなくて、反対からの視点や柔軟な広い視野をもって、考えなければならないという事です。
そして、自然や、生きているものは循環し、生まれては死んで土に戻るという事です。