
おいてけぼりをくらう事は、不安です。
何をするときも、出来ればひとりよりも、誰か味方がいる事は、心強いものです。
その味方であるはずの人がゾンビになっていたら、どうすればいいでしょうか?
この問題は、どこにでもあるのに、なかなか解決しにくい問題なのです。
『おいてけぼり』のお話しは、そんなとんでもない妖怪のお話しです。
それでは、ここから、『おいてけぼり』のあらすじをみていきます。
おいてけぼりのあらすじ
むかし、あるところに大きな古い池があります。
近くの人たちは、ここによく釣りをしに来ていました。
この池は、昼間は全くといっていいほど釣れませんが、日暮れごろになると、たくさん釣れるのです。
ところが、魚がいっぱいになって帰ろうとすると、どこからか、声がします。
「おいてけえ。おいてけえ。」
それは、まるで、地の底から聴こえてくるような、恐ろしい声でした。
その声がすると、誰もが、こわくてたまらなくなって、つり道具も魚も放りだして、逃げ出します。
ですので、この池の事を、いつからか、「おいてけぼり」と呼ぶようになりました。
近くの村に、ひとりの男が住んでいました。
この男は、とても度胸があることで有名だったのです。
「どうしてみんな、そんな声ぐらいで怖がるんだい?よし、じゃあ、おれが行ってみよう。必ず釣った魚を持って帰るからな。」
そして男は、ある日の夕方から出かけて行き、釣りをします。
辺りが暗くなってきて、魚もいっぱいになったので、帰ろうとしました。
すると、どこからか、「おいてけえ。おいてけえ。」という声がしたのです。
うわさに聞いた通り、本当に気味の悪い声でした。
それでも男は、「だれが、言う通りにするもんか!」と魚を入れたびくを持って歩き出します。
すると、向こうから、カランコロンと下駄をならしながら歩いて来る女がいました。
その女は、とても美しい女で、男のそばに来ると言いました。
「その魚を私に売ってくれませんか?」
男は、「いやだ!」と言います。
すると女は「おねがいですから売ってください。」と何度も頭を下げながら頼みます。
それでも男は「ダメだと言ったら、ダメだ!」と大きな声で言いました。
すると、女の顔は恐ろしいおに婆のような顔になって、言います。
「こんなに頼んでも、おいてかんのかぁ!」
それを見ても、男は、「ふん!誰がおいてくもんか!」と振り向きもしないで、さっさと帰ります。
それから、やっと家に帰りつき、さすがの男もホッとします。
そして、おかみさんに池であったことを話しました。
「今日は、おそろしい女に会ったぞ。さすがの俺も驚いたよ。でも、ちゃんと魚は持って帰って来たぞ。」
おかみさんは、向こうを向いたまま言います。
「その女は、どんな顔をしていましたか?」
そして、男が「暗くて良くわからなかったが、おに婆のように見えた。」と言います。
すると、おかみさんは、「それは、こんな顔じゃなかったかい?」と言いながら、くるりと振り返りました。
なんと、その顔は、あのおそろしい女と同じ顔だったのです。
さすがの男もそれっきり気を失ってしまい、気がつくと、そこは、男の家ではなくて、誰もいない山の中だったのです。
もちろん、つり道具も魚もなくなっていました。
おしまい。
おいてけぼりの教訓
このお話しの教訓は、人にいう事をきかすためのとんでもない方法にまんまとはまらないようにすることです。
世の中はおかしなことが多く、人をおどしていう事をきかすことがまだ行われています。
でも、それが、手法だと分かれば、少しでも巻き込まれることが少なくなるのではないでしょうか?
このお話では、釣った魚を置いて行ってもらうために、おいてけぼりの妖怪は、あの手この手と交渉を試みます。
最初は不気味な声をだして、相手を不安にさせます。
それでも思い通りにならなかったので、今度は、美しい女の人に化けました。
きれいな女の人の事を男の人はみんな好きだと妖怪はしっているのです。
そして、不気味な声のあとの美しい女の人なので、ふつうは、妖怪かもしれないと思うのです。
でも、怖さで混乱しているので、その姿で頼まれたら、ほとんどの人が魚を渡してしまうでしょう。
そして、それでもこの男は魚を渡さなかったので、今度は怖いおに婆になっておどすのです。
この男はそんな事は想定内だったので、それでも魚を渡さず、帰っていきました。
そして、この後は、男は家に帰って、ホッとしていて、油断していたこともあり、奥さんが鬼婆だったことに気をうしなってしまいます。
やっと、安心できる所に帰ってきたと思ったら、味方のはずの奥さんが化け物だったというのは相当ショックです。
例えば、ゾンビからのがれてやっと、家にたどり着いたら、奥さんがゾンビになっている事ぐらいに絶望するでしょう。
この怖さで混乱さすことと、味方が化け物だったという手法は、よく自分のいう事をきかせたい時に使われる方法です。
無理やりに人にいう事をきかそうとする人は、見た目はこわいけれども、普段はやさしい口調で話すのです。
この時に既にやさしいのか怖いのか、どちらが本当なのかわからず、すでに混乱します。
そして、私たちにはよくわからないところに、怒りのポイントがあって、突然大きな声で怒りだすのです。
そうかと思えば、言いたいことだけいうと、また優しい口調になります。
それを、何かの拍子で繰り返すものですから、こちらは、いつ大きな声をだされるかと、常に不安なのです。
だから、その人の近くに行くと、混乱するようになります。
そして、もうあんな怖い目に会いたくないと思ってしまいます。
ですので、怒らさないようにと思い、おかしな要求だと思ってもついいう事をきいてしまうのです。
さっさと要求をのんで、その人から少しでも離れたいと思います。
そして、誰かがなんとか、この状態を抜け出すために反論しようとしても、じぶんと同じ立場の人は、もうあきらめてしまっていました。
周りはみんなゾンビになっているのです。
そして、反論しようとした人も絶望し、あきらめてしまいます。
それから、一度このような人にどなられた経験のある人は、大きな声を出されるだけで、怖くてストレスになるのです。
こんな人がはびこる世の中をゆるしてはいけません。
おいてけぼりの原作
おいてけぼりは東京を舞台にした、七不思議の一つとして、語りつがれている。
落語などにも多用され、楽しまれ、有名になりました。
置き去りにするという意味の、「置いてけぼり」の語源とされています。
たぬきやカッパのしわざではないかとも言われている。
まとめ
このお話の教訓は、人にいう事をきかすためのとんでもない方法にまんまとはまらないようにすることです。
とはいえ、脳は恐怖には勝てず・・・こんな困った人への対処方法はないでしょうか?