
この星の銀貨は美しいお話です。
物語の最後には何とも美しい情景が浮かびます。
でも、私はう~ん・・・。
何だか納得がいかないのです。
このお話はいったい何を言いたかったのでしょうか?
では、ここからは、その星の銀貨のあらすじを見ていきましょう。
星の銀貨のあらすじ
むかし、小さなひとりの女の子がいました。
女の子は家族がみんな死んでしまってひとりきりです。
そして、女の子には住む家もなくて、あるのは着ている服とひときれのパンだけだったのです。
そのパンは女の子の事をかわいそうに思った人がくれた物です。
でも、女の子はとても優しい子でした。
そして、女の子は神様だけをたよりに野原へ歩いて行きます。
すると、男の人に出会うのです。
その男の人は、女の子に「どうか、私に何か食べるものを下さい。」と言います。
ですので、女の子は男の人にパンを全部あげて、「神様の祝福がありますように。」と言うのです。
そして、また歩いて行くと、今度は小さな男の子がやって来て言いました。
「僕は、あたまが寒くて仕方ないので、何かかぶる物をちょうだい。」
ですから女の子は自分の帽子を男の子にかぶせてあげたのです。
また少し行くと、べつの子供が何も身に付けずに寒くて震えていました。
なので、女の子は自分のチョッキをあげます。
しばらく行くと、今度は子供がスカートを下さいと言うのです。
ですから、女の子はスカートを脱いで、その子にはかせました。
女の子は森に入って行くと、またひとりの子供が来て、肌着が欲しいと言うのです。
やさしい女の子は(もう真っ暗だから、肌着がなくても大丈夫だわ。)と思い、肌着をその子に着せてあげます。
それから、女の子が、何もつけないでじっと立っていました。
すると、突然空から星が降って来て、その星は全部ピカピカ光る銀貨になったのです。
そして、女の子はいつのまにか、上等の肌着を着ていました。
それから、女の子は銀貨を集めて、お金持ちで一生暮らしました。
星の銀貨の教訓
このお話の教訓は、まず、「人には自分のしてほしい事をしましょう。そうすれば、自分にも良い事が返ってきますよ。」ということです。
日本では「情けは人の為ならず。」等ともいうのです。
これは「人に情けをかけておくと、巡りめぐって自分の元に返ってくる。」という事です。
この事は、このお話を読むと、いちばんわかりやすい教訓だと思います。
もちろん、この女の子は何か目的があって、人に全部あげてしまったわけではないのです。
ただ、そのことが正しいと思ったからあげたのでしょう。
この女の子のように純粋になにも見返りを求めないで誰かになにかをしてあげられたら素晴らしいと思います。
「女の子、かわいそうだなあ。
全部あげちゃうんだ、優しい子だなあ。
良かった、お金持ちになれたんだ。
この女の子は良い事したからね。」
本当に、このお話を作った人はそのことを言いたかったのでしょうか?
そこらへんに何かすっきりしないのです。
もしかしたら、このお話は、昔のお金持ちが「貧しくても人の物を奪ったりしないで、お互いに分け与えあっていれば、そのうちに、良い事があるからね。」という、お金持ちにとって、都合のいい考えを植え付けているのかもしれません。
現に、このお話では、貧しい人が、貧しい人に服や食べ物をもらっています。
このお話は、広い世界の貧しい人たちの事だけを切り取ったお話なのです。
どうしてそんなに貧しい人ばかり現れるのか?
お金持ちは一切このお話には登場しないのです。
もし出てきていたとすれば、女の子をあわれに思ってパンをひときれくれた人でしょう。
もし、その人がお金持ちだったとして、パン一切れって・・・。
「パンだって、少しはあげてるんだよ。後は自分たちで何とかしてね。」
それで、「運よく神様に好かれた人は、こちらのお金持ちの世界に来られますよ。」と言うお話。
例えば、日本の人は自分の生活を中層の上の方だと思っている人がたくさんいるのだそうです。
でも実際にそうなのでしょうか?
毎日、必死になって働いても、家賃も高くて、食べたいものをたくさん食べられる訳ではなく、欲しい物をすべて買えるわけではありません。
工夫をして節約して、やっと、貯金がいくらかできる位の人が多いのではないでしょうか?
少なくとも私はそういう暮らしです。
このような暮らしが中層の上の方だとすると、これから日本を支えていく若い人はますます大変でしょう。
その暮らしに、満足しているならいいのです。
でも、実際には家族や本人の病気や、何かの事情で仕事ができなくなったときにも、安心出来る位の蓄えのある人はどの位いるのでしょうか?
できれば、仕事ができなくなったときや、老後の事も心配する事なく暮らせる位の蓄えがある事が理想です。
そして例えば、サービス業でも、肉体労働でも、働いたら働いただけの報酬がきちんともらえて、評価もきちんとしてもらえるようにしていかなければ、若い人も働くのが嫌になってしまうでしょう。
当然、誰かを養うなどは考えにくくなり、子供も減ってきてしまうかもしれません。
すると、だんだんと、労働人口も減ってくるのです。
その時に日本はどうするのでしょうか?
星の銀貨の原作
ドイツの言語学者・文学者であるヤーコブとヴィルヘルムのグリム兄弟によって、グリム童話集に載せられた。
グリム童話集はグリム兄弟が直接古くから語り伝えられてきた民話を聞き集めたり、既存の書物からとられたお話もありました。
星の銀貨は初版では『貧しい女の子』という題でした。
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まとめ
このお話の教訓は、「人には自分のしてほしい事をしましょう。そうすれば、自分にも良い事が返ってきますよ。」という事です。
それから、頑張ったら頑張っただけの評価と報酬がきちんともらえるようになればいいなという事です。
本当にこれからの若者たちが心配です。
生き生きと楽しく働ける社会になればいいなと思うのです。